11話登場人物紹介
![]() つむぎ主人公三味線クラブ創設者。今回はクラシックセッションにチャレンジ!? | ![]() はやり つむぎの大親友。ムードメーカー 母はプロダンサー。今回は三味線で参加。 | ![]() りゅうこう 冷静 無口男子、祖母は三味線弾き。アコ・・ | ![]() かける 江戸っ子 三味線クラブのリード役。今回はクラシックピアノで参加。 |
![]() アコ 8話で登場したフォロワー100万人越え再生回数1億越えの人気シンガー。澄美田小OBでバイオリンが音楽の原点。といことで | ![]() ひびき 6話7話で登場した民謡会和太鼓担当。打楽器全般得意で今回は鉄琴グロッケンで参加。広島弁。 | ![]() ともえ 2話6話7話で登場したレギュラーキャラ。民謡会の篠笛担当。東北弁。fluteの代用で参加。 | ![]() たいきち 7話で登場した尺八。民謡会所属。今回はティンパニで参戦。博多弁 |
第10話漫画版は下スクロールして読む事が出来ます。




















































第1章|P0–P9 音楽で時間旅行――クラシックと三味線の歴史
P0|前回までのあらすじ
クラシックとの融合に挑んだ三味線クラブ。
バロックの世界を思わせる風景の中で、三味線、ピアノ、バイオリン、篠笛、ティンパニ、鉄琴――それぞれ違う音を持つ楽器が、少しずつ互いの居場所を見つけていった。
さらに、そこへ「うた」が加わる。
最初は別々だった八人の音は、演奏するたびにひとつの大きな響きへ変わっていった。
そして夏休み。
三味線クラブの、本格的なクラシック合宿が始まる――。
P1|夏休み初日、音楽室へ
夏休み初日の朝。
校舎はいつもの登校日より静かだった。それなのに音楽室には、楽器を抱えた八人の姿がそろっている。
窓から差し込む夏の光の中、はやりは早くも少し不満そうだった。
そんな空気を吹き飛ばすように、アコが楽しそうに声を上げる。
丹仁野先生は、これから始まる演奏の前に黒板へ視線を向けた。
かけるは隣でぼやくはやりへ、すぐさま江戸っ子らしいツッコミを入れた。
こうして最初の授業は、楽器を鳴らす前の「音の時間旅行」から始まった。
P2|音は時代を越える
西洋音楽の歴史をさかのぼると、その入り口はずっと昔へ続いていた。
古代ギリシャやローマでは、劇や詩とともに音について考え、研究する文化が育っていた。
やがて音を記録する方法が発達する。
その場で消えてしまうはずだった音楽が、楽譜によって次の時代へ渡せるようになった。
はやりの目が輝いた。
何百年前の人が残した音を、今の自分たちが演奏できる。
そう考えると、古い楽譜はまるで音楽のタイムマシンだった。
P3|教会から街へ
中世の礼拝堂には、人の声が静かに響いた。
最初は一本の旋律だった聖歌。それが二つ、三つと重なり、多声音楽へ広がっていく。
たいきちの気の抜けた声が飛ぶ。
ひびきたちは思わず笑った。
しかし音楽の居場所は、いつまでも教会だけではなかった。
宮廷、街、舞踏の場へ。使われる場所が変わるたび、音楽の役目も変わっていく。
音楽は、人が暮らす場所と一緒に姿を変えてきたのだ。
P4|クラシックも変わり続けた
時代は進み、十七世紀ごろ。
現在「クラシック」と呼ばれる音楽の大きな流れが、少しずつ見えやすくなってくる。
バッハの時代には対位法が磨かれ、古典派では形式と均衡が大切にされた。
さらにロマン派になると、編成は大きくなり、個人の感情や物語までもが音楽の中へ広がっていった。
決まりは、音楽を縛るものだけではない。
型を知っているからこそ、その外へ飛び出す面白さも生まれる。
三味線とクラシックを融合しようとしている八人にとって、それはとても大事な言葉だった。
P5|クラシックも衣替えするジャン!
教会から劇場へ。
何百年という時間の中で、音楽の居場所も、演奏する人の姿も変わってきた。
ひびきは、時代ごとに違う華やかな衣装を眺めて感心した。
それを聞いたはやりが、すぐさま手を上げる。
歴史の授業だったはずなのに、はやりの頭の中ではもう次の衣装の想像が始まっている。
音楽室に小さな笑い声が広がった。
P6|海を渡った三味線の祖先
今度は、日本側の音の旅が始まる。
三味線にも、長い旅の歴史があった。
海を越え、土地が変わり、演奏する人が変わる。
そのたびに楽器も少しずつ姿を変えていった。
十六世紀ごろ、三線は日本本土へ伝わる。
棹、胴、撥。それぞれが本土の芸能や音楽に合わせて変化し、やがて現在の三味線へつながっていった。
三味線もまた、旅をしてきた楽器だった。
P7|歌・芝居・踊りと三味線
日本へ渡った三味線は、ひとつの場所だけにとどまらなかった。
歌舞伎では舞台の勢いを支え、人形浄瑠璃では語りと人形の情景を深める。
座敷、地歌、民謡――使われる場所が広がるにつれ、音色も奏法も枝分かれしていった。
太棹、中棹、細棹。
同じ三味線でも、求められる音に合わせて形まで変わっていく。
違う歴史を持つクラシックと三味線。
けれど、どちらも人と出会うたびに変化してきたという点では同じだった。
P8|津軽の風雪が育てた音
三味線の旅は、さらに北へ向かう。
津軽では、厳しい風雪と人々の暮らしの中で、力強い音が育っていった。
太い棹。強い撥さばき。
遠くまで音を届ける必要があった土地で、津軽三味線らしい鋭く力強い響きが磨かれていく。
音楽は楽譜の中だけで生まれるのではない。
そこに暮らした人、その土地の空気、必要とされた役割が、少しずつ音を作ってきた。
P9|東西の音が一本につながる
西洋のクラシック。
海を渡り、日本各地へ広がった三味線。
まったく別々に見えた二つの歴史が、音楽室の中央で一本につながった。
丹仁野先生が譜面を手に取った。
はやりが待ってましたとばかりに身を乗り出す。
歴史を知る時間は終わった。
ここからは、自分たち自身が新しい音の続きを作る番だ。
第2章|P10–P20 コロッセオ――黒石よされ節×カルメン前奏曲
P10|コロッセオの役を選ぼう!
最初の課題は、いきなりただの合奏ではなかった。
音だけでなく、景色や役まで想像して演奏する。
八人の頭の中に、一気に古代の巨大な競技場が広がった。
演奏前から、すでに音楽室は舞台の裏側のような騒ぎになっていた。
P11|はやりの配役作戦
女子たちが楽しそうに役を決める横で、たいきちは少し呆れた顔をしていた。
隣でりゅうこうも黙ってうなずく。
その瞬間、はやりの顔にいたずらっぽい笑みが浮かんだ。
嫌な予感などまるで感じていないたいきちは胸を張った。
しかし、もう遅い。
はやりの頭の中では、二人の配役がほとんど決まりかけていた。
P12|黒石よされ×カルメン、開幕
景色が変わる。
そこは熱気に包まれたコロッセオ。
王女、プリンセス、闘牛士たちが並び、華やかな『カルメン』前奏曲の躍動と、黒石よされ節の土の匂いを持つリズムがぶつかり合う。
そして、はやりが選んだ「牛役」も姿を現した。
西洋の舞台音楽と津軽の民謡。
違う土地からやってきた二つの音が、ここでは同じ熱気の中で走り始める。
P13|闘牛士と牛の音の対決
カルメンの鋭いリズムへ、黒石よされ節が食い込んでいく。
闘牛士役のはやりが軽やかに身をかわす一方、牛役にされたたいきちとりゅうこうは、どうにも納得がいかない。
どこでも!! 流行るさあよ!!
怒っている二人とは対照的に、はやりの動きはますます軽快になる。
まるで本当に、闘牛士と牛の追いかけ合いが始まったようだった。
P14|なお流行る
三味線の撥音が、カルメンの鋭い拍へ重なる。
音の勢いは止まらない。
♪ なお流行る~~~~~
西洋の旋律の上で、津軽の節が堂々と鳴っている。
どちらかが相手に合わせて小さくなるのではない。
二つとも自分らしさを残したまま、同じ舞台の熱を作っていた。
P15|牛さんこちら!
演奏がさらに熱を帯びる中、はやりは牛役の二人を挑発するように手を叩いた。
その様子を見て、ひびきは腹を抱えるように笑う。
りゅうこうは何も言わない。
けれどその沈黙が、何より雄弁だった。
はやりはますます楽しそうに、コロッセオを駆ける。
P16|味があるよ、はやるさあよ
歌声が一段高く抜け、三味線とクラシックの響きをまとめて押し上げる。
味があるよ~~♪
♪ はやるさあよ!!!!
遠い土地で生まれた旋律と、津軽で歌い継がれてきた節。
違うからこそ、それぞれの癖がよく聞こえる。
その癖こそが、この融合曲の味になっていた。
P17|カルメンを終えて
最後の音が止まり、コロッセオの熱気がゆっくり音楽室へ戻ってくる。
息を整えながら、はやりが得意そうに声を上げた。
曲の感想より先に配役への文句が出てくる。
けれど、全力で動いた全員の顔には、疲れと同じくらい楽しさが残っていた。
P18|たいきちの理想と現実
たいきちの不満は、まだ収まっていない。
はやりは悪びれる様子もなく、にっこり笑う。
ひびきが笑顔で追い打ちをかける。
そう言いながらも、さっきより少しだけたいきちの声は小さくなっていた。
P19|違う音がぶつからないために
笑いが落ち着くと、八人は改めて今の演奏を振り返った。
丹仁野先生は満足そうにうなずいた。
融合は、ただ二曲を同時に鳴らすことではない。
互いの音を消さず、居場所を作りながら一緒に進む。
最初の課題で、八人はその感覚をひとつつかんだ。
P20|次は「天国と地獄×あいや節」
休む間もなく、次の譜面が開かれた。
丹仁野先生が次の課題を告げる。
演奏するだけではない。
今度は身体ごとリズムの中へ飛び込む課題だ。
音楽室が、次の瞬間には運動場へ変わろうとしていた。
第3章|P21–P28 運動会――天国と地獄×あいや節
P21|ヨ~イ! ドン!!
音楽室だったはずの景色が、一気に運動会へ変わる。
八人は楽器を構えながら、今にもスタートを切りそうな緊張感に包まれた。
次の瞬間――。
『天国と地獄』の速い旋律が一斉に走り出す。
そこへ津軽の声が勢いよく飛び込んだ。
ソレ!
クラシックのスピードと民謡の掛け声。
音だけだった競走が、身体ごと前へ進む運動会になった。
P22|アイヤー、うたが聴こえる
走るような旋律の上へ、あいや節の声が長く伸びる。
うたが聴こえる
西洋のオーケストラを思わせる忙しいリズムと、津軽民謡のゆったり引き伸ばす声。
速さの違う二つの流れが交差し、曲の中に大きなうねりを作った。
P23|つがるの国のうた
八人の足取りは止まらない。
旋律が次から次へ追いかけてくる中、歌は自分たちの故郷の音を堂々と掲げる。
ヨーロッパで生まれた旋律の上で、「津軽」という言葉が響く。
遠く離れた二つの土地が、同じ一曲の中で隣り合わせになった。
P24|よされ、じょんがら、それもよいな
声はさらに弾む。
それもよいな
あいや節だけではない。
よされ節も、じょんがら節も、八人がこれまで触れてきた津軽の音だ。
走りながら次々に名前を呼ぶような歌に、三味線の撥が勢いよく応える。
P25|あ~い~や~節
曲の真ん中で、声が大きく伸びた。
息を長く使う民謡の声。
その下では『天国と地獄』のリズムが休むことなく前へ進んでいる。
速い音と長い声。その対照が、かえって曲を大きく聞かせた。
P26|そりゃあ!!!
最後の直線。
演奏する八人の身体も、もうじっとしてはいられない。
音と動きが一つになった瞬間、全員の勢いが掛け声へ集まった。
掛け声が合図になり、ばらばらだった動きまで一気にそろう。
音楽室いっぱいに、運動会のゴールを駆け抜けたような熱が残った。
P27|演奏なのに全身運動ジャン……
曲が終わる。
楽器を弾いていただけのはずなのに、全員が本当に競走した後のように息を切らしていた。
疲れていたはずのはやりが、すぐに顔を上げる。
その横では、ともえが床へ沈み込みそうになっていた。
ひびきだけは、疲労よりも演奏の手応えを感じていた。
丹仁野先生が狙っていたのは、まさにそれだった。
P28|掛け声で心をつなぐ
息を整えながら、はやりはまだ自説を曲げない。
アコが笑いながら説明する。
つむぎは演奏を振り返った。
ひびきが嬉しそうにうなずく。
クラシックでは拍と譜面を共有し、民謡では声と呼吸を共有する。
方法は違っても、みんなでひとつの音へ向かうための仕組みなのだ。
二曲目を終えた八人。
次に待っていたのは、明るい運動会とは正反対の世界だった。
音楽室の空気が、ゆっくり暗くなる。
次の課題は――怪談。
第4章|P29–P39 怪談――トッカータとフーガ×三下がり
P29|次はお化け屋敷の曲?
運動会の熱気が残る音楽室に、今度は重く不気味な空気が流れ始めた。
譜面を見たはやりが、すぐに反応する。
アコは楽しそうに笑った。
暑い夏の合宿に、今度は背筋が冷える課題が始まろうとしていた。
P30|妖怪はくじ引きで決めよう
前回の牛役がよほど不満だったのか、たいきちは今度こそ自分で配役を守ろうとする。
たいきちの頭には、勇ましい鬼や天狗の姿が浮かんでいる。
紙にそれぞれ好きな妖怪を書き、抽選箱へ入れていく。
公平なはずのくじ引き。
けれど、たいきちにはまだ不吉な予感がしていなかった。
P31|はやりたちの妖怪候補
妖怪の名前を書きながら、はやりとひびきは好き勝手に候補を口にする。
たいきちは思わず顔をしかめる。
誰が何を引くのか。
笑いながら書いた紙が、次々と抽選箱へ落ちていった。
P32|怪談トッカータフーガ三下がり・配役決定
抽選結果が発表された。
雪女――ともえ。
猫又――はやり。
ぬりかべ――たいきち。
から傘――りゅうこう。
天狗――かける。
九尾狐――アコ。
鬼――つむぎ。
河童――ひびき。
たいきちは結果を見た瞬間、声を張り上げた。
公平なくじ引きだったはずなのに、なぜか一番嫌がっていた配役に落ち着いてしまった。
音楽室は笑い声に包まれた。
P33|怪談、開幕
灯りが落ちたように、空気が一変する。
重く響く『トッカータとフーガ』。
そこへ三味線の三下がりが、細く不気味に絡みつく。
西洋の教会を思わせる荘厳な闇と、日本の怪談の湿った気配。
二つの恐ろしさが重なり、音楽室はまるで夜の異界へ変わった。
P34|生きる喜び、噛み締めながら
妖怪たちが静かに姿を現す。
怖い姿をしていても、歌われる言葉は意外なほど人間らしい。
噛み締めながら
生きているからこそ感じられる喜び。
怪談の世界の中でその言葉が響くことで、歌には不思議な深みが生まれていた。
P35|唄い語るも
三味線の音が前へ出る。
音を鳴らすだけではなく、まるで昔話を語るように一音一音が進んでいく。
西洋のフーガが複数の旋律を追いかける一方で、三味線は言葉を背負うように響く。
異なる二つの「語り方」が、同じ怪談の世界を作っていた。
P36|三下がり
空気がさらに低く沈む。
三味線の調弦が生む独特の陰りが、怪談の景色を深くする。
伸びる声の後ろで、三味線の余韻がゆっくり消えていく。
恐ろしさの中に、どこか哀しさまで混じっていた。
P37|うらめしやあ!!
静かに積み重ねてきた怪談の世界が、最後に一気に弾けた。
妖怪たちの声と楽器が重なり、恐怖というよりも祭りのような勢いに変わっていく。
怖いはずなのに、どこか楽しい。
八人らしい怪談演奏は、そんな不思議な余韻を残して終わった。
P38|最後は四季「夏」×よされ節
怪談演奏を終えた八人に、丹仁野先生が最後の課題を告げた。
「夏」という言葉を聞いた瞬間、はやりの頭の中は音楽とは別の方向へ飛ぶ。
アコは、そんな反応を最初から予想していたらしい。
最後の大曲を前に、思いがけない休憩時間になった。
P39|冷たい差し入れで最後のチャージ
冷たい差し入れが、火照った身体へ染み込んでいく。
丹仁野先生が静かに微笑む。
かけるの背筋に別の意味で冷たいものが走った。
笑い声とともに体力も戻ってきた。
残る曲は、ただ一つ。
合宿最後の大航海が始まる。
第5章|P40–P50 大航海――ヴィヴァルディ四季「夏」×よされ節
P40|ファイナルは海!
休憩を終え、丹仁野先生が最後の譜面を構える。
今回の演奏テーマは海。
怪談の妖怪に続き、最後も役になりきって演奏する。
八人は思い思いの「海」を紙へ書き始めた。
P41|今度こそかっこいい役を!
たいきちは、これまでの配役を思い返して気合を入れ直す。
ところが周囲から出てくる候補は、彼の理想とは少し違っていた。
嫌な予感が、また少しずつ近づいていた。
P42|海の配役、抽選結果発表
最後の抽選結果が発表される。
船長――かける。
海賊――つむぎ。
海賊――ひびき。
海賊――はやり。
セイレーン――アコ。
セイレーン――ともえ。
赤タコ――たいきち。
緑亀――りゅうこう。
結果を見たたいきちは、しばらく言葉を失った。
船長を引くはずだった男は、ついに八本足の海の生き物になった。
周囲では、誰かが笑いをこらえていた。
P43|大航海LIVE、出航!
ヴィヴァルディ『四季・夏』の緊張感ある旋律が鳴り始める。
しかし八人の頭の中に広がる景色は、コンサートホールではない。
荒波を進む大きな船だった。
船長かけるの号令に、海賊たちが一斉に動く。
夏の嵐を思わせるクラシックの激しさと、よされ節の力強い拍が船を前へ押し出した。
P44|ハア~調子がわりの
波のようにうねる演奏の中から、民謡の声が立ち上がる。
ヴィヴァルディの鋭い夏の嵐へ、津軽の伸びやかな声がまっすぐ通っていく。
激しい弦の動きの中でも、民謡の節は決して埋もれなかった。
P45|よされ節、ハイ~~!
大航海はさらに勢いを増す。
♪ ハイ~~♪
掛け声に合わせて、八人の呼吸が一つになる。
クラシックの激しいリズムを追いかけながら、よされ節の声が船の帆をいっぱいに膨らませるように響いた。
P46|そらヨイヤ!
嵐の海を突き進むように、曲は最高潮へ向かう。
よされよされ そらヨイヤ!
一人の声に別の声が応え、さらに楽器が返す。
掛け声は合図であり、仲間同士をつなぐロープのようでもあった。
P47|よされ!! そりゃあ!
最後の一撃。
八人の音が同時に前へ飛び出した。
ヴィヴァルディの夏、津軽のよされ節、歌、掛け声、八人それぞれの楽器。
長い合宿で学んできたものが、ひとつの大きな響きになって着地した。
しばらく、誰もすぐには口を開かなかった。
最後の余韻だけが、音楽室に残っていた。
P48|クラシック合宿、修了!
丹仁野先生が、八人を見渡した。
ようやく終わった――。
そう思った瞬間、たいきちが勢いよく前へ出た。
ともえが事情を説明する。
クラシック合宿の終わりは、そのまま次の舞台への入り口だった。
P49|アコとの別れ、そして夏祭りへ
楽器を片づけ始める中、アコが静かに告げた。
かけるが振り返る。
クラシック合宿を一緒に駆け抜けた仲間との別れ。
少しだけ寂しい空気が流れたが、はやりは立ち止まってはいなかった。
こうして私たち三味線クラブのクラシック合宿は幕を閉じた。
けれど夏休みは、まだ終わっていない。
最後に待つのは、町会の夏祭り。
P50|次回予告 夏祭る! 盆踊る!
三味線クラブ、夏休み最後の大イベント。
舞台は町会の夏祭りへ!
太鼓、盆踊り、屋台――。
はやりが真っ先に反応したのは、やはり音楽とは別のところだった。
クラシックの世界を旅した三味線クラブは、再び日本の夏へ帰ってくる。
次回――第12話。
夏祭り、盆踊り編。









