9話登場人物紹介
![]() つむぎ主人公三味線クラブ創設者。今回はジャムセッションで大幅に成長!? | ![]() はやり つむぎの大親友。ムードメーカー 母はプロダンサー。今回はジャズダンスで参加。 | ![]() りゅうこう 冷静 無口男子、祖母は三味線弾き。作中密に衣装に着替えるが誰にも気づかれない・・ | ![]() かける 江戸っ子 三味線クラブのリード役。今回はジャズピアノで参加。 |
![]() にるとん 13歳、ブラジル人。ジャズバーZのファミリーTimeのドラマー。かける兄はやとからつむぎ達のエスコートを任された。 | ![]() レン 13歳 マレーシア人。 ジャズベース弾き語りシンガー。演奏に徹する時はウッドベース。 | ![]() ザンヌ 5話で登場したライバル。吹奏楽クラブ所属。ザンスの娘。意地悪天邪鬼な性格だがつむぎの事はお気に入り??サックスの腕前は一流。 | ![]() ジュラ 5話で登場したライバル。ズラの娘。ホルン腕前は一流。今回はジャズのフリューゲルホルンで参戦。はやりの事をライバルと認めている。 |





























































第9話漫画版は下スクロールして読む事が出来ます。
P0–P8 ジャズバーZ道中記・商店街
P0|前回までのあらすじ
すみみだ小学校四年生のつむぎは、大親友のはやり、寡黙な三味線少年りゅうこう、江戸っ子気質の先輩かけると三味線クラブを立ち上げた。
ライバルとの稽古場バトル、伝説の三味線弾きとの出会い、和楽器仲間とのセッション、そして駅前ストリートライブ。四人は音を重ねるたび、三味線の世界がどこまでも広がっていることを知った。
今度の研究場所は、かけるの兄が教えてくれたジャズバー。夏の日曜、四人は新しい音を探しに商店街へ飛び出した。
P1|兄の置き手紙
日曜の昼過ぎ。朝顔の鉢が並ぶ澄美田商店街で、四人はかけるの家の三味線屋へ集まった。けれど、店に兄の姿はない。残されていたのは、走り書きの置き手紙だけだった。
かける兄「俺はまた旅に出る。お前らだけで楽しんで来い」
かけるは紙を握りしめ、深くため息をつく。「てやんでい。肝心な時にいねえんだから、勝手なアニキでい」
はやりは目を輝かせた。「でも、うちらだけでジャズバーへ突撃するのも楽しそうジャン!」
P2|かけるのジャズドレス
店を出ると、はやりがかけるの紺藍色のドレスを上から下まで見つめた。
はやり「かける先輩、今日はずいぶんオンナらしいジャン!」
かける「アニキの指示でピアノを弾くことになったんでい。ちょうどピアニストが欠員らしくてな。仕方なく、この格好でい」
りゅうこうがぽつりと言った。「オンナみたいだ」
かける「俺はオンナだ!」 夏の商店街に、いつもの怒鳴り声が響いた。
P3|はやりのジャズダンス
今度は、かけるが桜色のダンス衣装を着たはやりを指さした。
かける「そういうおめえこそ、なんだその格好は」
はやり「今回は時間がないから、ダンスで参加するジャン!」
つむぎ「そういえば、はやりのお母さんってダンスの先生だったね」
はやりは得意そうに胸を張った。「ママ、有名人にも教えてるらしいジャン!」 四人の頭には、スポットライトの中で踊る先生のシルエットが浮かんだ。
P4|シャミってる方が楽しいジャン
かけるは急に真顔になった。「なんだと。じゃあ、てめえはダンサーになるのかよ?」
つむぎも少し不安そうに、はやりを見る。りゅうこうは黙ったまま答えを待っていた。
はやり「ダンスも好きだけど、シャミってる方がもっと楽しいジャン」
つむぎの肩から力が抜けた。かけるもほっとした顔を隠すように横を向く。
かける「てやんでい。驚かせやがって」 その口元は、ほんの少しだけ笑っていた。
P5|糸の切れた三味線
はやりは、かけるの顔を横からのぞき込んだ。「ひょっとして、はやりがいないと寂しいジャン?」
かける「てめえなんざ、いなくなった方が静かでせいせいすらあ!」
そう言い切ってから、かけるは小さく付け足した。「でも、はやりのいない三味線クラブは、糸の切れた三味線だな」
はやり「意味わからんジャン」 りゅうこう「脳ミソ、プッツン」
はやり「あ! 失礼しちゃうジャン!」 つむぎは笑いながら二人をなだめた。「欠かせない仲間って意味だよ」
P6|兄からつむぎへの伝言
かけるは歩きながら、兄から預かったもう一つの伝言を思い出した。
かける「今日、俺がピアノへ回されたのは、ジャズにピアノが欠かせねえのと、ちょうど欠員が出たからだ。でもそれだけじゃねえ」
かける「三味線クラブの担い手のお前に、経験を積ませたいんだとよ」
つむぎ「えっ。そんな、私なんてまだ経験不足で……」
かける「だから、その経験を今日積めってことだろ?」 つむぎは背中の三味線ケースを感じながら、静かにうなずいた。
P7|きっかけが大事
かける「俺だって昨日のステージがなきゃ、きっと唄弾きはできないままだった」
つむぎ「そっか。最初からできる人はいないんだ。きっかけが大事なんだね」
かける「おっ。ずいぶん飲み込みが早く、前向きになったじゃねえか!」
はやり「つむぎは、うちの成長ガシラジャン!」
りゅうこう「誰かさんも見習え」 はやりはきょとんと首をかしげた。「誰のことジャン?」
P8|つむぎの決意
商店街の角を曲がる前、つむぎは足を止め、三人を見た。
つむぎ「私、できる限り三味線で参加する。わからない、できないなりに!」
かける「おう、その粋やよし! どこかできっかけを作るからよ」
はやり「シャビ! やっぱり、はやりも三味線がいいジャン!」
かける「おめえは今日はダンスに徹しろ!」 笑い声を残し、四人は国際エリアへ向かった。
P9–P11+店舗ガイド にるとん登場・国際エリア
P9|ジャズバーZはどっち?
香辛料や焼き菓子の匂いが混ざる澄美田国際エリア。かけるは兄の手描き地図を何度も回した。
かける「ジャズバーZ……アニキの地図、アバウトすぎて道がわからねえ」
はやり「あそこに、地元に詳しそうな人がいるジャン!」
遠くにいた褐色肌の少年が、四人の声に気づいて振り返る。「ジャズバーZなら、こっちやで!」
その少年こそ、ブラジル出身のドラマー、にるとんだった。
P10|はやりングりっしゅ。
外国人だと思ったはやりは、胸を張って一歩前へ出た。
はやり「ハロー! ジャズバーZ、ドッチ、ジャン?」
にるとん「せやから、こっちや言うてるやろ」
はやり「おお! はやりングりっしゅ、通じたジャン!」
かける「大ボケかましてんじゃねえ! 日本語でしゃべってるじゃねえか!」
P11|ポルトガル語も理解できるジャン
にるとんは笑いながら、自分を指さした。「わいはブラジル人やさかい、母国語はポルトガル語やで」
はやり「すごい! はやり、ポルトガル語も理解できてるジャン!」
りゅうこう「今のも日本語」
つむぎが吹き出すと、にるとんは親しげに手招きした。「おもろい子らやな。店まで案内したる」
五人は、色とりどりの看板が並ぶ路地の奥へ進んだ。
店舗ガイド①|Jazz Bar Z フロア案内
にるとん「ここがJazz Bar Zや。昼は家族連れも入れる音楽カフェ、夕方からセッション会場になるんやで」
入口の先には約百席の客席。正面ステージにはグランドピアノ、ドラム、ウッドベース用の立ち位置があり、管楽器や三味線も加われる広さがある。
壁際には楽器を安全に置くスペースと控室。客席と演奏者の距離が近く、初めての人でも音の振動を体で感じられる造りだった。
店舗ガイド②|Jazz Bar Z セッションの楽しみ方
レン「Jazz Bar Zでは、年齢も国籍も楽器も関係なく、同じ曲の中で音を渡し合いマス」
決まった譜面をなぞるだけではない。相手の音を聴き、自分の音で返す。ソロの人を支え、次の人へ場所を譲る。それがジャムセッションの基本だ。
にるとん「見るだけでもええし、手拍子でも参加できる。音を楽しむ気持ちが、いちばん大事やで!」
P12–P15 レン登場・ザンヌとジュラ再会
P12|Jazz Bar Zへようこそ
重い木の扉を開くと、柔らかな照明に照らされたステージが現れた。白いドレスの少女がウッドベースを整えている。
にるとん「ただいま! お客さん、連れてきたで」
レン「Welcome to Jazz Bar Z! ワタシはレン。今日はベースと歌を担当しマス」
かけるはピアノへ、りゅうこうとつむぎは三味線を置く場所へ案内された。はやりは広いステージを見て、早くも足でリズムを刻んでいた。
P13|聞き覚えのある語尾
奥の控室から、サックスの音と丸い金管の音が重なって聞こえた。
つむぎ「この音、どこかで聞いたことがあるような……」
黄緑のドレスの少女が姿を見せる。「遅いザンヌ」
続いて水色のドレスの少女がフリューゲルホルンを抱えて現れた。「待ちくたびれたジュラ」
はやり「ザンヌ! ジュラ! こんなところで何してるジャン!」
P14|ライバルとジャズで再会
以前、稽古場をめぐってぶつかった二人との思わぬ再会。つむぎは驚きながらも、少しうれしかった。
ザンヌ「勘違いするなザンヌ。あなた達に会いに来たわけじゃないザンヌ」
ジュラ「Jazz Bar Zから演奏を頼まれただけジュラ」
かける「てやんでい。相変わらず素直じゃねえな」
レン「知り合いなら話が早いデス。今日はみんなで音を合わせマショウ!」
P15|八人の音、準備完了
ピアノにかける。三味線にりゅうこうとつむぎ。ダンスにはやり。サックスにザンヌ、フリューゲルホルンにジュラ、ウッドベースにレン、ドラムににるとん。
楽器も国籍も性格も違う八人が、同じステージへ集まった。
にるとん「ほな、まず軽く音を出してみよか」
つむぎは三味線を抱え直した。緊張は消えない。それでも、商店街で決めた言葉を心の中でもう一度繰り返す。できないなりに、まず参加する。
P16–P21 シャミる追分ジャムセッション
P16|最初の音を探す
にるとんのスティックが小さくカウントを刻み、レンのベースが深い音で床を支えた。かけるのピアノが和音を置き、りゅうこうの三味線が短く応える。
つむぎはすぐに弾かず、全員の音を聴いた。どこへ入れば邪魔にならないのか。その一瞬の迷いを、レンが優しい目で受け止めた。
レン「SimpleでOK。まずは同じ音を、同じリズムで」
つむぎは小さく一音を鳴らした。その音に、にるとんが軽いリズムを返した。
P17|シャミる追分、スタート
追分の節をもとにした最初のジャムが始まった。三味線の余韻の隙間を、ピアノとベースが静かに埋める。
かける「つむぎ、焦るな。土台を守れ」
つむぎ「うん!」
ザンヌのサックスが黄緑の光のように伸び、ジュラのフリューゲルホルンが水色の丸い音で包み込む。違う楽器なのに、互いの続きを歌っているようだった。
P18|はやりのダンスが音をつなぐ
はやりは演奏者の間を桜色の風のように踊った。三味線の鋭い音には素早いステップ、ベースの深い音には大きなスイング。
はやり「言葉がなくても、次に誰が来るかわかるジャン!」
にるとん「ダンスも立派なセッションや!」
はやりの動きが客席の視線を導き、音の受け渡しが目にも見えるようになっていった。
P19|つむぎ、音を支える
りゅうこうが自由にフレーズを走らせる間、つむぎは同じ型を崩さず繰り返した。
派手ではない。けれど、つむぎの音があるから、ほかの音が安心して遠くへ飛べる。
りゅうこう「そのまま。止めるな」
つむぎは、自分が主役の音を出さなくても、曲の中心にいられることを初めて知った。
P20|音で交わす自己紹介
ザンヌが鋭く問いかけ、ジュラが柔らかく答える。かけるがピアノで茶目っ気のある和音を差し込み、レンとにるとんが笑うようなリズムを返した。
かける「てやんでい。話すより、こっちの方が性格がよく出らあ」
レン「Music is language! 音は国境を越えマス」
つむぎも短い三味線の合図を送る。今度は誰にも促されず、自分の意思で。
P21|最初のジャム、着地
最後の一拍を八人が同時に止める。店内に短い静寂が生まれ、その直後、客席から拍手が起きた。
つむぎ「合わせるって、同じことをするだけじゃないんだね」
りゅうこう「違うまま、つながる」
はやり「それがジャムるってことジャン!」
かける「で、三味線でやるなら――シャミる、ってわけだ」
P22–P27 つむぎの成長・シャミる?ジャムる?
P22|自分の役割
最初の演奏を終えたつむぎは、自分の手を見つめた。
つむぎ「りゅうこう君みたいに自由には弾けなかったけど、途中からみんなの音が聞こえた気がする」
レン「それが一番大切デス。Bassも伴奏も、聴く力が音を支えマス」
つむぎは、自分の役割が『目立つこと』ではなく『みんなが進める道を作ること』だと感じ始めていた。
P23|りゅうこうからの誘い
りゅうこうは三味線を膝に置き、つむぎの隣を軽く示した。
りゅうこう「次、ここ。俺の音を追わなくていい。自分の間で」
つむぎ「私の間……?」
りゅうこう「聴いて、選ぶ」
短い言葉だったが、つむぎには十分だった。誰かの真似ではなく、自分で音を置く。その挑戦が始まる。
P24|シャミる? ジャムる?
はやり「三味線でジャムるなら、ジャムる? シャミる?」
かける「どっちでもいいだろ、音が合えば」
つむぎ「でも『シャミる?』って聞くと、一緒にやろうって感じがする」
ジュラ「楽器が違っても、心はシャミれるジュラ」
ザンヌ「勝手に新しい言葉を増やすなザンヌ」 そう言いながら、ザンヌも笑っていた。
P25|失敗しても音は続く
次の練習で、つむぎは一度だけ入りを間違えた。音がぶつかり、指が止まりそうになる。
かける「止まるな! 間違いも次の音へつなげろ!」
にるとんがすぐにリズムを変え、レンが低い音で道を作る。つむぎは息を吸い、もう一度バチを振った。
失敗は消せない。けれど、仲間となら音楽の一部へ変えられる。
P26|つむぎの合図
曲の途中、全員がつむぎを見る瞬間が来た。次へ進む合図を、誰かが待っている。
つむぎは迷いながらも、三味線で短く強い一音を鳴らした。
その合図で、ザンヌとジュラが同時に旋律へ入り、かけるのピアノが大きく開いた。
はやり「つむぎがみんなを動かしたジャン!」
つむぎの胸に、小さな自信が灯った。
P27|次はじょんがら節
かけるは鍵盤から手を離さず、次の曲を提案した。
かける「そろそろ、速いやつでい。じょんがら節をジャズでやるぞ」
ザンヌ「本気を出せそうザンヌ」
ジュラ「負けないジュラ」
つむぎは緊張しながら三味線を構え直した。今度は支えるだけではない。速い流れの中で、自分の音を選ぶ番だ。
P28–P34 じょんがら節ジャムセッション
P28|じょんがらスイング開幕
にるとんのカウントから、じょんがら節が跳ねるスイングへ変わった。レンのベースが歩き、かけるのピアノが鋭く切り込む。
りゅうこうの三味線が先頭を走り、つむぎはその下で拍を支えた。
はやり「速い! でも踊れるジャン!」
客席の手拍子まで加わり、店全体が一つの大きなリズムになった。
P29|サックスと三味線の火花
ザンヌのサックスが高く鳴き、りゅうこうの三味線が細かな音で応戦する。
ザンヌ「ついて来られるザンヌ?」
りゅうこう「そっちこそ」
黄緑と深緑の音がぶつかるたび、互いの演奏はさらに鋭くなった。勝負しているのに、曲は一つにまとまっていく。
P30|ジュラの丸い音
熱くなった音の間へ、ジュラのフリューゲルホルンが丸く柔らかな旋律を差し込んだ。
ジュラ「強い音だけがジャズじゃないジュラ」
つむぎはその余白に合わせ、三味線の音数を減らす。弾かない間も、立派な演奏なのだ。
レンが満足そうにうなずき、深いベース音で二人を支えた。
P31|はやり、全身でスイング
はやりはステージいっぱいに動き、演奏者一人ひとりの色をダンスで拾った。
にるとんのドラムに肩を揺らし、かけるのピアノに足を跳ね上げ、三味線の連打に合わせて回転する。
はやり「音が速いほど、身体が勝手に動くジャン!」
その笑顔につられ、客席の子ども達まで一緒に踊り始めた。
P32|つむぎの一歩
かけるが突然、伴奏を薄くした。つむぎの前に、音の空間が開く。
つむぎ「えっ、私?」
かける「今だ。行け!」
つむぎは覚えたばかりの型を土台に、短いフレーズを自分で組み立てた。完璧ではない。それでも、全員がその音を受け取り、大きな合奏へ育ててくれた。
P33|八人のじょんがら
三味線、ピアノ、サックス、フリューゲルホルン、ウッドベース、ドラム、そしてダンス。八人の個性が同時に走りながら、じょんがら節の芯だけは揺らがない。
つむぎはもう、音の多さにおびえていなかった。誰が前へ出て、誰が支えているのかが聞こえる。
レン「Everybody, together!」
最後の山へ向かい、八人は一斉に音を押し上げた。
P34|じょんがらスイング、フィニッシュ
かけるの強い和音、にるとんのシンバル、三味線の鋭い一撃。すべてが同時に止まった。
一拍遅れて、客席から大きな歓声が起こる。
つむぎ「できた……私も、みんなの中で弾けた!」
はやり「つむぎ、最高にシャミってたジャン!」
演奏の熱が残る中、八人は次の曲へ向けて息を整えた。
P35–P38 シャミるバンダナ
P35|演奏のあとで
じょんがらスイングを終えたステージには、まだ拍手の余韻が残っていた。
つむぎは三味線を抱えたまま、はやりのダンスを見つめる。踊りだけでも十分に輝いている。でも、はやりが本当に好きなのは三味線だと知っていた。
かける「次は本庄追分だ。少し空気を変えるぞ」
レンとにるとんがリズムを確認し、ザンヌとジュラも楽器を整えた。
P36|つむぎも踊りへ
はやり「次はつむぎも一緒に踊るジャン!」
つむぎ「えっ、私が?」
はやり「演奏だけが参加じゃないジャン。音を身体で感じればいいんだよ!」
つむぎは少し迷ってから三味線を置いた。「うん。やってみる!」
二人が並ぶと、ステージの空気が桜色と黄色に明るく変わった。
P37|シャミるバンダナ
にるとんが、八色の花柄バンダナを抱えてやって来た。
にるとん「せっかくや。みんなでおそろい、色違いにしよ!」
レンは白、にるとんは赤、かけるは藍、りゅうこうは深緑、ザンヌは黄緑、ジュラは水色。つむぎは黄色、はやりは桜色。
つむぎはバンダナを結びながら、にるとんを見上げた。「これなら、音の仲間ってひと目でわかるね!」
P38|本庄追分、演奏開始前
八人は色違いのバンダナ姿でステージへ戻った。
つむぎとはやりは中央で立体的に踊る位置へ。りゅうこうは三味線、かけるはピアノ、レンはベース、にるとんはドラム、ザンヌとジュラは管楽器を構える。
かける「準備はいいか?」
はやり「いつでも来いジャン!」
にるとんのスティックが上がり、本庄追分ジャムセッションが始まった。
P39–P42 本庄追分ジャムセッション
P39|ジャズ本庄追分・前奏
かけるのピアノが静かな夜道のような和音を置き、りゅうこうの三味線が遠くから呼ぶように響いた。
レンのベースとにるとんのブラシが、ゆったりした足取りを作る。
つむぎとはやりは、黄色と桜色の軌跡を描きながら踊った。追分の長い節が、ジャズの揺れに乗って店内へ広がっていく。
P40|本庄追分・弾き語り前半
かけるは鍵盤を弾きながら、力強く唄い始めた。民謡の節回しとジャズの和音が、意外なほど自然に重なる。
ザンヌのサックスは唄の語尾を受け、ジュラのフリューゲルホルンは次の息へ橋を架けた。
つむぎは踊りながら、演奏している時とは違う角度で音を感じる。足で拍を踏むと、曲の土台が身体の中へ入ってきた。
P41|本庄追分・弾き語り後半
後半、かけるの声はさらに伸び、ピアノの和音も大きく開いた。
はやり「つむぎ、次はこっちジャン!」
二人が左右から中央へ回り込むと、音の軌跡が一つの輪になる。
りゅうこうの三味線ソロ、ザンヌとジュラの掛け合い、レンとにるとんの土台。八人の役割が、目で見える演奏になっていた。
P42|後奏・八人のキメポーズ
本庄追分の余韻を残しながら、全員が最後のフレーズへ入った。
にるとんの合図で音が止まり、八人はそれぞれの楽器と身体でキメポーズを取る。
一瞬の静寂。そして、客席から地鳴りのような拍手が押し寄せた。
つむぎは息を切らしながら笑った。演奏もダンスも、どちらも音の中へ入る方法だった。
P43–P45 ラストはみんなでシャミる?ジャムる?
P43|気がつけば観客総立ち
客席を見ると、約百人の家族連れが立ち上がり、拍手と歓声を送っていた。
つむぎ「うわ! 演奏が楽しすぎて、お客さんがいることも忘れてた」
レン「Everybody, thank you!」
レンは笑顔で客席へ手を振り、続けた。「次の曲がFamily Time、ラスト曲デス!」
ステージにも客席にも、まだ終わりたくないという熱が満ちていた。
P44|ラストナンバーは、りんご節
かける「ラストナンバーは、りんご節でどうでい?」
レンはウッドベースへ持ち替え、親指を立てた。「ワタシは演奏に徹しマス!」
ザンヌ「この曲は嫌いじゃないザンヌ」
ジュラ「つまり、好きだと言ってるジュラ」
かける「つむぎ、はやり、りゅうこう。りんご節なら練習したからいけるだろ。はやりはアニキの置き三味線を使え!」
P45|ラストは、はやりもシャミる!
はやり「もちろん、喜んで参加するジャン!」
つむぎ「やった! はやりも一緒だ!」
二人は三味線を抱えてステージ中央へ立った。はやりは待ちきれずマイクを取る。
はやり「みんな! ラストナンバー、盛り上がってくれジャン!!」
かける「てやんでい! いっちょ前に」
はやりは舌を出して笑った。「いっぺんやってみたかったジャン」
P46–P51 りんご節ジャムセッション
P46|ウォームアップ
ザンヌ「まず音合わせするザンヌ」
合図を待ちきれなかったはやりは、今まで踊るだけだった鬱憤を晴らすように全身で三味線を鳴らした。
かける「ばか野郎! はしゃぎすぎて壊すなよ!」
はやり「了解ジャン!!」
レン「演奏フォームはデタラメだけど、リズム感はGoodデス」
にるとん「えらいこっちゃ。全身でスイングしとるがな」
P47|りんご節・前奏
つむぎ、はやり、りゅうこうの三味線三重奏が前奏を切り開いた。
レンのウッドベースとにるとんのドラムが大きな土台を作り、かけるのピアノが春の光のような和音を散らす。
ザンヌのサックスとジュラのフリューゲルホルンが空へ伸び、八人の色が一つの流れになった。
P48|りんご節ジャズ・一番「春」
ステージの背景が、満開のりんご畑の心象風景へ変わる。
かける「春は りんごの」 Apple blossoms, sweetly bloom.
かける「いと花盛りよ」 Dancing underneath the moon.
つむぎ、はやり、りゅうこうの三味線が正面から拍を押し出す。
かける「いとし乙女の よ~ほ~イ」 My lovely lady, yo-ho-i.
かける「ええ 花カムリ」 With a crown of blossoms bright.
P49|りんご節・間奏
歌が止むと、春のりんご畑を渡る風のような間奏が始まった。
ザンヌとつむぎ、はやりとジュラ、りゅうこうとレン、かけるとにるとん。異なる楽器同士が二人一組になり、問いと答えを交換する。
誰かが前へ出れば、誰かが支える。短い組み合わせが次々に変わりながら、曲は夏へ向かって色を濃くした。
P50|りんご節ジャズ・二番「夏」
背景は青葉の茂る夏のりんご畑へ。金色の蝶が音の軌跡に沿って舞う。
かける「夏は 青葉の」 Green leaves swinging, side to side.
かける「みどりの林よ」 In the summer forest light.
つむぎ、はやり、りゅうこうは横一列で三味線を鳴らす。つむぎのショートボブがリズムに揺れた。
かける「蝶が蜜につられて よ~ほ~イ」 Butterflies come flying, yo-ho-i.
かける「ええ 舞い遊ぶ」 Dance and play the whole night through.
P51|りんご節・後奏
後奏では、はやり、つむぎ、りゅうこうが一人ずつ三味線の音を前へ出した。
はやりの音は元気に跳ね、つむぎの音は仲間をつなぎ、りゅうこうの音は鋭く全体を締める。
ザンヌとレン、ジュラとにるとんがそれぞれ音を重ね、かけるのピアノが全員を最後の一拍へ導いた。
八人の音が同時に止まる。りんごの花びらと音符の光だけが、しばらく空中に残った。
P52–P57 エピローグ・次回予告
P52|スタンディングオベーション
八人がフィニッシュポーズを決めた瞬間、約百人の観客が一斉に立ち上がった。
拍手、歓声、口笛。家族連れの笑顔が店内を埋め尽くす。
八人は楽器を抱えたまま、何度も客席へ手を振った。
つむぎは胸に手を当てた。今日ここで鳴った音は、演奏者だけのものではない。聴いてくれた全員と作った音だった。
P53|演奏を終えて
つむぎ「ザンヌさん、ありがとう!」
はやり「ジュラと演奏、楽しかったジャン!」
ザンヌ「勘違いするなザンヌ」
ジュラ「ここを出たら、またライバル同士ジュラ」
かけるはにやりと笑った。「おおお。つまり、このひよっこ二人をライバルだと認めるんだな!」
ザンヌとジュラは同時に言葉に詰まった。
P54|年齢も国境も楽器も越えて
ザンヌ「前言撤回ザンヌ!」 ジュラ「前言撤回ジュラ!」
はやり「来るなら、いつでも来いジャン!」
つむぎ「でも、年齢も国境も楽器も越えて、ジャムって最高だね」
かける「おう! にるとんとレンも、本当にありがとうな!」
レン「どういたしまして」
にるとん「またいつでも待っとるで!」 八人の笑い声が、大団円のステージに重なった。
P55|丹仁野先生
和気あいあいとした輪の背後から、聞き覚えのある声が響いた。「つむぎさん、はやりさん、かけるさん、りゅうこう君」
四人が振り返る。つむぎ「あ、丹仁野先生!」
客席の光の中から先生が姿を現した。「ジャム、最高だったわよ」
つむぎ「そんな、私なんかまだ全然……」
はやり「それほどでもあるジャン!」
かける「一曲だけのくせしやがって、大きく出たな!」
P56|Classicへの誘い
はやりが頬を膨らませ、かけるが楽しそうに笑う。その様子を見て、丹仁野先生は続けた。
丹仁野先生「明日の放課後、三味線クラブの練習――」
丹仁野先生「今度はClassicで、あなた達の参加を待ってるわ!」
かける・つむぎ・はやり「クラシック!?」
りゅうこうだけは黙ったまま先生を見つめた。ジャズの余韻の向こうに、また新しい音楽の扉が開く。
P57|シャミる! 次回予告
つむぎ「今度はクラシックにチャレンジ!?」
かける「嗚呼、三味線が恋しいぜ」
はやり「ホームシックジャン!」
りゅうこう「日本のクラシック」
つむぎ「西洋のクラシックとの融合!?」
はやり「次回も見どころ満載!」
かける「次回も、ぜってえ見てくれよな!!」
次回『シャミる!』第10話――三味線の歴史 Classicと三味線。











